きっかけは3万円
保険に税金、メンテナンス。
クルマは、購入した後からでもお金がかかる乗り物です。
一度購入したらそれっきり、という訳にはいかないでしょう。
一方でクルマを手放す際、多くのユーザーは下取や買取という形でクルマをお金に変えます。
年数によって目減りしていくものの、クルマには資産としての価値があると考えられます。
クルマにかかる維持費と資産的な価値。
この2つと向き合って、クルマの買い替えに至ったお話をご紹介します。
今回のきっかけとなった修理費は3万円。
あなたなら修理しますか? それとも買い替えますか?
Aさんが乗っているクルマは日産の代表的な軽自動車のデイズ。
買い物や通勤といった街乗りに使っています。
購入した営業スタッフが退職し、新しい営業スタッフに引き継いで2年。
クルマに不満がないからか、購入から12年が経っていました。
このお話は、そんなデイズの窓ガラスのUV加工が剥がれてしまい、見積もりを取る所から始まります。
窓ガラスのUV加工の修理をするためには、その箇所のガラスを交換する必要がありました。
営業スタッフが見積もりを手渡します。
金額にして、1枚3万円。

1口に3万円といえば大金です。
ですが、エンジンや発電機が壊れれば何十万とかかる自動車の修理において考えれば、比較的安価で収まっている部類でしょう。
3万円支払ってしまえば、ひとまずは快適に乗れますから。
しかしながら、営業スタッフは仮説を立てます。
デイズは12年経過していて、来年車検。
今ここで修理をするのであれば、車検も少なくない費用が掛かる。
資産的な考えだけで見れば、年数が経ち下取の落ちていくデイズに、3万+車検代を払って乗る「価値」があるのか……?
営業スタッフはあくまで軽く、しかし考えた仮説を確かめるように尋ねます。

「クルマ、買い替えますか!」
Aさんから出てきた言葉は意外なものでした。
「実は迷っているんだ。」
Aさんの想定では、15年目の車検を通すつもりはないが、クルマそのものに不満もない。
そのため、3万円という修理代を支払うべきかどうかで揺れているとのことだったという。
ひょっとしたら、Aさんは自分の仮説に耳を傾ける準備が出来ているのでは。
営業スタッフはそう推察した上で、今後の話も交えながら提案します。
「15年目の車検を通さないなら、どんなに乗ってもあと3年しか乗らないことになります。
そのために、車検も併せて20万円近くの金額を支払いますか?」
悩みだすAさんに営業スタッフは続けます。
「クルマを買い替える選択肢、いくらかかるか知っておきませんか?」
こうして、デイズの見積もりを制作することになりました。
幸い、先々でクルマの使い方が変化することはなさそうです。
今のデイズに不満がないことから、同じデイズ、同じ色、同じグレードをチョイス。
金額的にも、これなら購入できそうな範囲。
「クルマを購入するのがいつでもいいのであれば、下取の値段がついて、修理と車検の20万を払わなくて済む、今買いませんか。」
こうしてAさんは、今の3万円と2年後の車検を支払うより、その金額を使って新しいデイズを購入することを選びました。
新しいデイズは、エンジンに加えて、小さなモーターが加速をアシストする機能を搭載。
納車して初めての点検で、出だしがよくなったことを営業スタッフに嬉しそうに語ったのでした。

「クルマは壊れるまで乗る。」
「あと何年乗る。」
お客様に今のクルマのことについて話すと、そんな言葉を耳にします。
しかしながら、その選択が果たして正しいのか、誰にも判断することは出来ません。
だからこそ営業スタッフは、時に目に見える金銭的価値として「維持費」と「資産」を伝えます。
「価値」と「気持ち」。
この二つを納得してこそ、クルマ選びの最適解は生まれるのです。