最適解の種を蒔く
クルマを購入するとき、こんな風に言われたことはないでしょうか。
「今日買ってくれるならあといくら値引きします!」
クルマ屋に限らず、営業スタッフは常に目の前の売上に追われます。
しかしながら、目先の売上に飛びつくことはお客様のためにはなり得ません。
今回の話は今までと違い、まだクルマの購入に至っていません。
クルマを今日買うことが最適解に繋がらない、それでもクルマを検討する情報は与えなければならない。
こういったお客様に対して、営業スタッフはどんな行動を起こすのか。
今回のお客様であるAさんは、工場で働く30代男性。
5年前、自分の母親から譲り受けたモコのエンジントラブルがきっかけで新車を購入しました。
職場が近かったこともあり、「乗れるならいい」と軽自動車の日産デイズを選んでいます。
当時の営業が退職し、引き継いだ営業スタッフとの付き合いが開始しました。
そんなAさんは、デイズの点検のために来店します。
営業スタッフと顔を合わせたのは3回目。
2回目の来店時にAさんと営業スタッフとの話の中で、Aさんの趣味がキャンプであることが分かり、「次回はキャンプの話を聞かせてください!」と話して終わりました。
「GWはどこか行きました?」
営業スタッフが尋ねます。
「山梨ですね。ソロキャンプで行くんです。」
Aさんはデイズで、ソロキャンプをしていることを伝えます。
キャンプについて教えてもらう営業スタッフ。
と同時に、営業スタッフとしてAさんの買い物の傾向にも興味を持ちます。
「キャンプの用品、高くないですか? 調べて買います? 衝動的に買いますか?」
高価な買い物をする際の買い方は、人によって異なります。
最適解な提案のためには、お金の使い方や買い方にも配慮する必要があります。
Aさんは答えます。
「安くなっているタイミングを調べて買います。直接お店に行くことは少ないですね。」

買い物にはタイミングを重視するというAさん。
その後、話題はAさんの生活の変化に。
「実は、転職したんですよね。」
そう伝えるAさん。
ステップアップのため、現在の仕事経験を活かして転職したとのことです。
翌月頭から京都で半年ほど研修があり、その前に点検をしたかったそうです。
キャンプが趣味なこと、職場が変わること。
これらの情報を得て、営業スタッフは考えます。
本当に、軽自動車のデイズに乗り続けることが最適解なのだろうか。
「僕からもひとつお伝えしたいことがあるのですが。」
営業スタッフが口を開きます。

「今後の話です。
クルマの使い方が変わってきたような気がしたのですがどうですか。」
荷物を載せるなら、軽自動車では手狭かもしれない。
配属などによっては、通勤時間も変わるかもしれない。
「キックスぐらいの大きさでもいいかもね。
いずれは、友人を連れてキャンプに行きたいんだ。」
Aさんも、営業マンの質問に肯定的な答えで返します。
キックスは、日産のコンパクトSUV。
e-POWER搭載で走りも良く、通勤やアウトドアにうってつけのクルマです。
何より、デイズは5年目。
2回目の車検に加え、タイヤ、バッテリーなどの消耗品も交換の時期になる頃です。
「今後、デイズはメンテナンスにお金がかかります。
下取としての価値も下がります。
デイズにお金を掛けるより、下取の条件がいいうちにキックスへの買い替えを検討してみませんか?」
下取と消耗品から見た、営業スタッフからの提案。
これだけであれば、よくある話です。
今回異なるのは、「今」クルマを購入する話ではないこと。
転職をした直後であり、京都の研修が直近で控えている状況。
忙しさの面でも、お金のやりくりの面でも、この状況でのクルマの購入は大変です。
Aさんにとって、クルマを今すぐに購入することは最適解ではありませんでした。
営業スタッフはそれを分かったうえで、お客様の買い替えの「最適解」を提案します。
「Aさんがこちらに戻って来る頃は決算セールの時期です。
キャンプの用品と同じく、いいタイミングでのお話が出来ると思いますよ。」

決算では、通常時よりも値引きが多くなる傾向にあります。
「安くなるタイミング」を重視するAさんにとって、営業スタッフの提案は魅力的なものでした。
「そうだね。遅くとも来年のうちには、買い替えた方がいいのかも。」
「転職が落ち着いたタイミングで、また提案します。
ゆっくり考えてみてください。」
こうして、Aさんと営業スタッフは半年後に向けて、ゆっくりですが確実にクルマ選びを始めたのでした。
Aさんが京都から帰ってくる、「最適解のタイミング」に向けて。
物事が成果に結びつくことを「花開く」と言うことがあります。
営業マンにとってもお客様にとっても、最適解を選ぶうえでのクルマの購入はまさに花。
そうであれば、今回営業スタッフの提案はまさに「種蒔き」だといえるでしょう。
今日花を咲かせることは出来ない。 けれど種を蒔かなければ咲くこともない。
お客様がクルマを購入出来る準備のために、営業スタッフは今日も種を蒔くのです。