知多半島特集

『さ』~澤田酒造株式会社 澤田 研一さん~

平坦な道のりでは、きっと味気ない。

普段何気なく買ったり口にしている調味料。
古くから醸造などのものづくりの文化が息づく知多半島には、料理の基本の調味料「さ・し・す ・せ・ そ」が勢揃いします。
温暖な気候や質の良い地下水を生かし、昔ながらの製法で造られた「酒・塩・酢・醤油・味噌」。
知多の自然と共にこれらを育むのは、酸いも甘いも噛み分けて、人生のうま味を知っている職人たち。
バイクを乗り回した学生時代、海外を飛び回った 20 代、思い悩んだ 30 代…。
職人たちの人生も一緒に味わえる、知多半島「さしすせそ」の旅へ出ませんか。

澤田酒造株式会社 澤田 研一さん

PLOFILE
・寛永元年(1848年)創業 清酒「白老」の醸造元 澤田酒造株式会社の会長。
・知多の歴史と文化を伝承する酒蔵として、昔ながらの製造工程を公開する「酒蔵開放」を年に一度行っている。

『地域の食の味に寄り添う酒を。代々目指しているのは米の味を生かした丁寧な酒造り。』

逆境にあった日本酒業界で拓いた道

若い頃からいつかは造り酒屋をやらなくてはという意識はあったのですが、体制が古くて融通の利かない、日本酒の需要も減る中で大手に押されるという、将来性のない嫌な業界だなと思っていました。しかし、どうせなら同じように厳しい状況にある企業に入って、どうやって立て直していくかを見て来ようと考えたんです。そこで、当時向かい風だったとある大手の食品会社に入社して3年間勉強しました。
そこでは沢山のことを学んだのですが、戻ってきてすぐには経営をどうすることもできず、30代くらいまでは嫌で嫌でまともに向き合っていなかったんです。そのうち業績も悪化して潰れる寸前になり、3年くらいもがき苦しんで悩んだところで、こうなった原因は誰のせいでもない、何もやってこなかった自分だと気付いて、その責任を自分で取るために社長になりました。父親とは、お互いこのままじゃ潰れるというのは分かっていて、何とかしていきたいけれどどうしていいか分からず、毎晩大喧嘩したりもしましたが、結局は経営の弱みでもあった、手間やコストがかかる「手造り」を強みと捉え、古い造りだからこそできる丁寧な美味しいお酒を大切にしていこうということになりました。飲んでくれる方に美味しいと満足していただけるよう、小さな蔵だからこそできる手を抜かない昔ながらのやり方で今も酒造りを続けています。

澤田酒造が守り続けてきた昔ながらの酒造りが生む日本酒の魅力

うちが目指しているのは今も昔もお米の味をしっかりお酒に生かす酒造りです。
お米というのはそれぞれに個性があって、同じ品種でも、産地や年、田んぼ一枚一枚によっても個性は変わります。それぞれのお米の個性に合わせて旨味を引き出していくには、少量ずつ伝統の造り方をしていくのが一番だと思っています。木の桶でお米を蒸して、麹づくりは麹蓋という道具を使って…、今そのような造りをしている蔵はあまり残っていないのですが、ひとつひとつの工程を丁寧に行うことで、旨味のあるお酒ができます。
うちのお酒を飲む時は、鰹節や昆布で出汁を取って、良い醤油や味噌で味付けした料理の肉や魚や野菜、みんなとぴったり合うと思います。一言で言えば、ご飯のおかずになるものと非常に相性がいいんです。

酒米を蒸すための大きな木桶「甑(こしき)」

酒の旨味を追い求めるのには、愛知の風土と食文化に理由があった。

愛知県は豆味噌文化圏ということで非常に旨味のあるものが好まれます。人工的なものではない、海の幸、山の幸といった、素材自身の旨味を使って味を引き出すという食文化の中で、酒はその引き立て役でいいと私は思っています。その地域で採れるものを、その風土に一番合った作り方で作ったものは、その地域に一番よく合うし、そういうものを食べながら飲むというお酒の飲み方がこの地方の昔からの流れだったので、それは大事にしていきたいですね。
それとこの辺りは大酒飲みが少ないので(笑)、少量でも満足していただけるお酒の方が人々に合っているんです。色んなお酒がある楽しみの中でうちのお酒としては、仕事が終わって家でほっとしたときに、ちびちび飲みながら自然の恵みを味わっていただける、穏やかなお酒が造っていけるといいなと思います。そのためにはやっぱりいいお米といい水と丁寧な造りが必要なんです。

原料に使われる“いい水”とは知多半島丘陵部の伏流水。すなおな軟水で、ふくらみのある、まろやかな酒質を生む。

澤田さんが考えるこれからの酒蔵の在り方

今は日本酒を飲む人も日本酒に対してのイメージも変わってきています。飲む人が変われば好まれる酒質も変わるわけですが、そういった新しい時代の流れを読むのが難しくなってきたので、2年前に社長の役を交代しました。
ただ、色んな変遷があっても変えてはいけないものもある。いつも底流にあるのは、人を欺くような商売はせず、飲んでもらう人に美味しいと言って満足して喜んでもらえる酒を作っていくということ。そういったことは次の世代も引き継いでいって欲しいですね。

読者へのメッセージ

弊社の清酒「白老」の名前の「白」は、お米を白く磨いて丁寧にいいお酒を作りますよ。「老」は年を取っても美味しくて良いお酒を飲んで長生きしてくださいね。という願いが込められています。
それぞれの地域には、その土地の気候や風土に合ったお酒がありますので、うちのお酒に限らず是非日本酒を嗜んでください。

SHOP INFORMATION

店名
澤田酒造株式会社
住所
〒479-0818 愛知県常滑市古場町4-10
電話
0569-35-4003
営業時間
9:00-17:00 (土・日・祝日を除く)

この記事をShareする

関連記事

TOPへ