地元の非日常

「心願は漕いで叶えろ!限界を目指すとよはし自転車紀行・前編」

願いをかなえるには神頼み……だけじゃ足りない!

皆さんには、何か叶えたい願いはありますか?

今、あなたの頭に浮かんだ「願い事」。大きく分けて二種類にあると思われます。

一つ目は、「北海道へ旅行に行きたい」「フルマラソンに挑戦したい」など、自分で行動を起こすことで叶えるもの。

二つ目は、「持病が良くなりますように」「世界から争いがなくなりますように」など、自分の行動だけで100%結果を変えることが難しいもの。

今回私たちが注目するのは後者の願い事です。

でも、自分の力だけではどうしようもできない願い事を叶えるためにできることって……?

そう、それは……神社に参拝して神頼みをすること。

しかし、ただ神社に行ってお参りをするだけでは心もとない気もしますよね?なにか自分の行動によって、願いが叶う可能性を高めたいのです。

私たちはこう考えました。

修行僧のように自分自身を肉体的に追い込むことで、願いが叶う可能性を上げられるのではないか、と。

そこで今回、実際に筆者が上司を巻き込み検証してみました。

幸運なことに豊橋市は神社の数も多く、一部車道には自転車走行レーンがついており自転車で神社を巡るにはうってつけの地。

本記事では、自転車に乗って豊橋市内の神社を体力と時間の限界まで回り、神様に祈願する過程を前後編にわたって皆さんにお届けします!

豊橋市の神社巡りをしたいと考えている皆さんの参考になればうれしいです。

旅の相棒は道の駅に。

決行の日、時刻は13時半を回ったところ。私と上司は道の駅とよはしに降り立ちました。

今日のお目当ては新鮮な野菜でも、ここでしか食べられない豊橋グルメでもなく……。

そう、今回の企画に必要不可欠な相棒・自転車です。

筆者「それにしても、道の駅でレンタサイクルが借りられるなんて今回初めて知りました!」

上司「そうだね。今回の企画はかなりの距離を走るから、E-BIKEが借りられてよかったよ。」

「地域の魅力を自転車に乗って体感してほしい」という想いから、道の駅とよはしではE-BIKEの有料貸出を行っています。

ちなみにE-BIKEとは電動アシスト機能が付いたスポーツバイクのこと。より速いスピードを出せることや、坂道を上りやすくサポートしてくれることが特徴です。

確かに海岸沿いをE-BIKE のスピード感で風を切りながら走ったら、すごく気持ちよさそう……!

受付で名乗ると、すぐに自転車を出してきてくださいました。

事前にホームページから予約をしていたのでスムーズな受け渡し。

今回は4時間利用1,000円のプランでお借りしました。

この自転車も、今からまさか自動車会社の社員によって市内の神社巡りに使われるとは思っていないことでしょう。

実はこれまでスポーツサイクルの類に乗ったことがない筆者。

そんな筆者も安全に乗ることができるように、丁寧にアシスト機能の切り替え方を教えてくださった職員さんにお礼を言い、自転車を引いて外へ向かいます!

14:00 願いを胸に、いざ出発

筆者「そういえば、上司さんはどんな願い事を叶えたいですか?」

上司「うーん、まあ健康かな。筆者さんは?」

お互いにヘルメットを装着しながら、顔を見合わせる我々。

筆者「そうですね……私とか周りの人達が何事もなく心身共に幸せでいられること、ですかね。」

上司「うん、素敵な願い事だね。」

サドルの位置を調整し、最も疲れにくい体勢で自転車を漕げるようにしたら準備万端!

人生初のスポーツサイクルに気合が入り、浮かれている筆者。

年甲斐もなく、「折角なので写真撮ってください!」と上司に頼み、自転車とともに記念撮影。

こんな風に緊張感のないスタートを切り、広大な駐車場を抜けて車が多く行き交う道路へ。

しかし、道路に出るまでの間に早くも方向感覚を失ってしまった筆者。

これが全ての始まりでした。

当初のルートは、まず西に向かってから野依町の周辺で方向転換し、豊橋駅方面に向かって北上するというもの。

筆者「一回止まってルート確認しますね、えっと………あれ?」

ところが、目印としていたコンビニエンスストアを間違えてしまったようで、当初の予定とは大きく外れて道の駅の北側に出てしまっていたのです。

上司「行く場所は筆者さんに合わせるよ。」

筆者「……予定、変更します!」

企画時に練りに練った巡礼ルートが全て無に帰し、行き当たりばったりの自転車旅がスタートしたのでした。

苦労さえもご利益に変え、道なき道を突き進め!

さて、ここからどうしよう。任せてくださいとは言ったものの、初めからこんな調子でいいのかな。

筆者「ここから一番近いのは……天伯山神社ですね。」

本来ならば終着点として設定していた神社。まさか一番初めにお参りすることになろうとは。

旅の行く末への不安を振り払うように、ペダルを踏んで漕ぎだします。

車の交通量が多く歩道が狭い東七根藤波線。

対向車が来ませんように……と祈りながら進みます。

一本道を途中で外れると、一転して田畑が多い穏やかな景色に。緩やかな坂を下っていくと神社の麓まで辿り着きました。

コンクリート舗装されていない坂道を登った先に、神社はあるようです。

思ったより急な坂道だったので、自転車を降りて押し歩きます。すいすいと坂を登っていく上司に負けじと、坂を登ると……。

14:13 開拓者の祈りを受け継ぐ地・天伯山神社

筆者「おお〜!開放感がありますね!」

上司「広いね~、手前の建物は社務所とかかな?」

神社と広大な敷地が目に入ります。

自転車を置き、改めて境内に向き直ります。手前の建物が「開拓記念館」で、境内は奥にあるようです。

第二次世界大戦後、軍用地だった地が農地として開拓される中で、入植者がこの地の守り神として天照大御神を祀ったのが1947年。

社殿の造営はおよそ30年後の1975年と最近で、確かに社殿の壁が新しく見えます。

二匹の狛犬に挨拶をしながら、賽銭箱の前へ。

お賽銭を入れ、二礼二拍手一礼。

神様に願いが届くよう、ガランガランと大きく鈴を鳴らします。

そうして、目を閉じて天に祈ります。

私や周囲の大切な人たちが健康で幸せな日々を過ごせますように。よろしくお願いいたします。

お参りを終えて境内を後にしようと振り返った景色がこちら。

鳥居から社殿まで、すうっと一本に伸びる参道。

派手さはないけれども、どことなく心が洗われるような、そんな美しさを感じませんか?

この神社に祀られている神様から見える景色はこんな感じなのかなあ。なんて感傷に浸ってしまいました。

もう少しこの場所を堪能したい気持ちはやまやまですが、まだ旅は序盤も序盤。

次の目的地である天伯神社へと向かいます。

同名の神社が豊橋市には二つありますが、今回向かうのは天伯町にある天伯神社です。

田畑を抜けて、小松原街道をまっすぐ。

砂利道を通るとタイヤから伝わる振動で自転車がガタガタと揺れ、内心ビクビク。

筆者「おっ!ここかあ!」

調子が出てきて見晴らしの良い道路をぐんぐん進んでいたため、一瞬そのまま通り過ぎてしまいそうになりました。

14:26 天伯神社にて、明治の先人への敬意を

左のわき道を入って奥に参道があるようです。

こちらの天伯神社も軍用地にある原野を開拓した先人によって創建されましたが、時期は明治末期。

天伯山神社と比較すると古いですね。

木造の境内と鳥居からは古さを感じますが、神社が開けた土地にあるせいか暗さは全く感じません。

敷地内にある秋葉神社の分社にもお参りさせていただきます。

静かな雰囲気に浸り、高ぶっていた気持ちが落ち着いていくのを感じます。

まだまだ旅は始まったばかり、ここからどうリカバリーするかを考えよう!

ヘルメットをかぶりなおして、気持ちを新たにします。

天伯神社を後にして、次の逆戈神社に向かいます。

左折した東三河環状線はやや車の交通量が多いので、注意しながら進みます。

自転車を漕いでいると、道に張り出ている背の高い雑草がパシパシと足を叩いてくるので、露出が多い服装では怪我をしてしまいそう。

14:38 旅路で感じる、知られざる歴史の源流

筆者「あ、ここかな?」

田畑が続く中で、神社の周辺のみ木が生い茂っていて目立っています。

上司「あのおじいさん、地元の方かな?」

これまで訪れた神社では私たち以外の参拝者はいませんでしたが、こちらには先客が。

ホースのついた手洗い場で手を清め、スマートにお参りをして階段を降りていかれました。

私たちも後に続きます。

なかなか急な階段をなんとか登り終え、鳥居をくぐった先には大きな石が。

石碑の前にある平ぺったい石が、駒止の石なんですね。

筆者「ん!?頼朝!?ってあの頼朝!?」

上司「ほかにどの頼朝がいるのよ。」

源頼朝といえば日本人で知らない人はいない有名人。

しかし豊橋とゆかりがあるイメージもあまりなかったので、こんなところで名前を目にするとは思わないでしょう。

境内にある看板によると、創建は白鳳元年。なんと飛鳥時代……それなら頼朝が来ていてもおかしくはない……かも?

歴史があることを知ってから改めて周囲を見渡すと、確かに鳥居に掲げられた「逆戈神社」の文字にも境内にも重厚感を感じますね。

思わぬ場所でかの有名な源頼朝公の息吹を感じられる、貴重な経験となりました。

続いての神社は環状線を真っ直ぐ進んだ先。環状線を右折して、奥に入ったところにひっそりと佇んでいます。

逆戈神社とは1㎞ほどしか離れていないため、いわばご近所さんです。


14:46 豊橋一の○○に出会える隠れた名所

鳥居の横に立っている石柱には「神明社」とのみ書かれています。

Googleマップでは「本郷の神明社」と表示されていましたが、境内の看板によると高蘆神明社というようです。

なんと白鳳三年に伊勢神宮を勧奉斎したことが由来なのだそう。

ちなみに白鳳とは寺社の縁起や地方の地誌や歴史書等に多数散見される私年号のこと。

ここでは白鳳三年は六四七年とされていますが、年代は諸説あるそうです。

正確な年数はともかく、飛鳥時代にまで由緒がさかのぼるというのは驚きですよね。

境内にはこんなものもありました。

この「百度石」は、同じ神社仏閣に百度参拝する「百度参り」をする際の基点です。

今回我々はさまざまな神社を巡ることで願いを叶えようとしていますが、同じ神社にたくさんお参りするのが一般的なのでしょうか。

境内はこぢんまりとしていますが、敷地全体は広々としていて心地よさを感じます。

お参りを終えて出口へ向かう我々の視界には、どどんとそびえたつ巨木が!

筆者「見てください!木のところになんか書いてあります。」

この木はなんと、豊橋市内のクロガネモチでは最も高い木として「とよはしの巨木・名木100選」に登録されているのだそう。

上司「へー。すごいね、豊橋市で一番高いのか。」

幹の立派さや見上げるほどの高さが写真だけでは伝えきれないことがもどかしいです。

樹齢はわかりませんが、長きにわたって地元の方々を見守ってきたのでしょう。

またしても歴史を感じさせられる、貴重な時間を過ごすことができました。

次の目的地である高師神社も、およそ1㎞と近い場所にあります。

一つ違うのは、住宅が周囲に立ち並ぶ中に建てられていること。

道中には立派な門構えのお寺があり、興味を惹かれましたが訪問はまた別の機会に。

あまり広いとはいえない二車線道路は交通量も多いため、気をつけて進みます。

住宅街を通る道路の左手に、突如現れた高師神社。階段を登った先には……。

14:59 住宅街と境内とを分かつ幟シールド!

境内にたどり着くためには、鳥居をくぐってぐるりと回り道をしなければなりません。

参道を取り囲む高師神社の名が入った大量の幟に、少し圧を感じながら進みます。

賽銭箱は社殿の内側にあるらしく、格子の隙間からお賽銭を入れさせていただきます。

筆者「あっちにあるのはなんでしょう?」

上司「ほんとだ、行ってみようか。」

そう、メインの神殿以外にも敷地内には多数の祠が。

それぞれ名前を確認すると、御霊社と稲荷社、秋葉神社の祠だそう。

「一つの神社で複数の神様にお参りできるなんてお得じゃん!」などと考えていましたが、すべての祠にお参りをしたらさすがに疲れてしまいました。

しかし休んでなどいられない……!神社を取り囲んでいる竹林と大量の幟に見送られながら高師神社を後にするのでした。

筆者「次はこの日吉神社ってところに向かいます。」

高師神社の北東ほどに位置しており、ここからは少し離れています。道が狭めの住宅街を車に気をつけながら向かいますが……。

筆者「あれ?おかしいな……すみません、一回止まります。」

マップを見ているのに目的地に辿り着けず、神社からは遠ざかる一方。

坂を下ったり上ったりしながら周囲をぐるぐる。

軌道修正をするため小学校の近くで立ち止まります。気づけば振出しに戻ってしまっていました。

目の前の道とGoogleマップをにらめっこする筆者。

もしかして……!頭に稲妻が走り、思考が一つの線でつながります。

筆者「そっか、ここの脇道をまっすぐ進めばいいのか……!」

予想は的中!

自転車を降りて歩かないといけないくらい細い脇道を進んだ先に、日吉神社はありました。

個人のお宅の敷地内なのかと思って、右方向へ続く坂を下っていったのが間違いだったようです。

(図:筆者作成)

15:25 旅の苦労は絶景を楽しむ最高のスパイス。

筆者・上司「つ、着いたあー!!!」

すっかり憔悴しきって、よろよろと自転車を停める私たち。気分はまるで残業をして終電で帰宅してきた金曜日の夜のよう。

敷地は小さめですが、高台にあるため開放感がある境内。

木のぬくもりを感じる社殿は、丁寧に管理されている印象を受けます。

神社の創立自体は1300年と古いですが、社殿が建てられたのは江戸中期の頃でその後何回か修繕されているようです。

看板によると、本来大山作命と菊理姫命を祭神とするべきだったのに間違えて大己貴神を祀ってしまったという説があるのだとか。

神様を間違えてしまうというのはかなりの一大事であると感じますが、神様と地元の方々が納得しているならば無問題なのでしょう。


上司「一回ここで休憩していこうか。」

筆者「そうですね。じゃあ境内の外でお茶でも飲んで……うわあ!」

鳥居越しに見える景色に思わず目を奪われました。

高台にある神社からは瓦屋根の家々が広がる街が一望できるのです。青空にはかわいらしい雲がぽこぽこ。

筆者「こんなに空が綺麗だなんて、自転車に乗ってる時は気づきませんでした。」

お茶でのどを潤し甘いチョコレートを口に含むと、疲れ切った身体に再び力が湧いてきます。

いっぱい迷ったけれど、ここに来られてよかったなあ。

爽やかに澄んだ空を眺めながら、心からそう思いました。

<後編へ続く>

訪れた神社一覧

神社名所在地御祭神
天伯山神社〒441-8122 豊橋市天伯町豊受1‐1天照大御神
天伯神社〒441-8122 豊橋市天伯町天伯121‐1不明(皇大神宮御神効を祭祀)
逆戈神社〒441-8117 豊橋市浜道町船原43国常立命
高蘆神明社〒441-8153 豊橋市高師本郷町本郷48天照大御神・須勢理比賣命
高師神社〒441-8154 豊橋市西高師町字船渡3菊理姫命・伊弉諾命・伊弉册命
日吉神社〒441-8153 豊橋市高師本郷町字東上9‐1大己貴命・大山昨命・菊理姫命

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