OLD NISSAN ~クルマを長く乗る愉しみ~

あなたは、ご自身が普段乗っているクルマに、どんな感情を抱いていますか?「カッコいい」、「使い勝手がいい」、「通勤用」…さまざまあると思います。

今回は、26年にわたり、自分のクルマを「かわいい」と一途に思い続けている方を取材しました。

取材させていただいたのは、パオに乗り続けて26年の長江さん。豊川市在住、専業主婦の方です。趣味は、手捏ねでパンを作ること。しかも、国産小麦を使用するという素敵な“こだわり”を持つ長江さん。そんな長江さんにお話をお伺いする中で、パオについてもさまざまな「かわいい」の“こだわり”を聞くことができました。 

パオは、1989年に受注生産限定で発売されたパイクカー(pike car)です。パイクカーとは、「pike=槍」という意味のとおり、スタイリングが先鋭的なクルマのことです。当時、日産からは、「Be-1」、「パオ」、「フィガロ」の三つのパイクカーが販売されました。三台とも、初代マーチをベースとしているのですが、違いは、とにかくデザインが凝られていること。パオは、まんまるのヘッドライト、外側に取り付けられたヒンジなど、まるでおもちゃみたいな要素がたくさん詰まったかわいらしいクルマです。当時、3ヶ月間の期間限定受注だったにも関わらず、5万台を超える注文が殺到しました。

「こんなかわいいクルマ見たことない。」

長江さんがパオを購入したのは、26年前の1992年でした。

当時、街で走っているパオを見て、そのかわいさに一目ぼれ。ご両親に買ってもらったお車(長江さん「全然かわいくなかった!」)があったのですが、パオを購入することを決意しました。長江さんの乗っているパオの色は、「アクアグレー」というくすみのかかった水色のようなカラー。ハンドルとシートなど、内装は白を基調としています。その淡い色の組み合わせが、パオをよりノスタルジックな雰囲気に。

また、見た目はもちろん、内装にもかわいいこだわりが。長江さんいわく、運転席が「飛行機のコックピットみたい」なんです。ハンドル横のつまみのついたレバーや、丸いスピードメーターは、まさに小型飛行機の操縦席を思わせるわくわくする運転席。今のクルマには見られない、こだわりの内装です。

購入されてから26年が経っても、買った当時から変わらず、パオのことがとにかくかわいい長江さん。買い物で駐車場に戻りパオを見たとき、前を走るシルバーのタンクローリーに映るパオを見たとき、などなど、毎日パオを見るたびに「わ~!かわいい!」と思うのだそう。それもうなずける、かわいさのこだわりがパオにたくさんあるのです。

修理に出すと寂しいんです。

パオは発売されて以来、29年が経ちます。それだけ時が経ったクルマは、修理や整備が不可欠ですし、それには時間も要します。長江さんは、10年前に「再生整備」をパオ専門店に依頼しました。再生整備とは、新車のときより走るようにさせる、4ヶ月に及ぶ整備だそうです。4ヶ月間もパオとお別れするのは、長江さんにとって号泣レベル。修理の間、借りていた代車の軽は、パオより走るし、快適なのは間違いないのに、長江さんは全く惹かれませんでした。むしろ、パオとの離れているが寂しく、パオのミニカーや写真を見て我慢していたとか。長江さんにとって修理は、「より良くなって戻ってくるのが楽しみ」や、「代車でいつもと違うクルマに乗れてわくわく」ではなく、「無事に戻ってきてね」の気持ち。それだけパオのことを、わが子のように大切に思っているのだと伝わってきました。

もう一度全塗装がしたい

10年前の再生整備のときに、一緒に全塗装も行いました。長江さんは、もう一度全塗装がしたい。その費用は、なんと60万円!自分のクルマに対し愛がないと、なかなか出せない金額です。「(旦那さんから)『まだお金出すの?』と言われますが、無言です。無視します。」とのこと。また、どんな色にするかは、パオ専門店のホームページや、オフ会で他の方が乗っているパオを見て、日々悩んでいるそう。パオのオフ会は、年に一度浜松で行われます。普段お目にかかることの少ないパオが並んで走る様子は圧巻で、みんなで走るのが楽しいとおっしゃっていました。たくさんのパオが集まる中でも、自分のパオが一番かわいいと語っているのが印象的でした。それだけ強い思いがあるからこそ、お金と時間をかけられるのかもしれません。

パオ以上のクルマに出会えない。

これが、長江さんがパオに乗り続けている理由のひとつです。パオ以上に気に入るデザインのクルマが見つからないという意味も含まれていると思いますが、それよりも、長江さんが乗っているパオへの愛着や愛情の強さを感じる言葉でした。これから先、パオを乗り続けていくことについて伺うと、「もうパオの辞め時がわからない。」と笑いながらおっしゃっていました。もしも、パオのエンジンがかからなくなっても、そのままの状態でご実家に置いておきたいのだそう。長江さんにとってパオは、“なくてはならないもの”、というより、“一緒にいることが当たり前の存在である”のだと感じました。

パオは、長江さんの人生を、きっとこれからも見守っていくのでしょう。

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